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〈以下、版元ウェブサイトより〉
ZINE『小島信夫の話をしたいのだけれど』が話題を呼び、『これは歯的な話』で第七回ことばと新人賞(主催・書肆侃侃房)佳作を獲った富田ララフネ、育児×読書カップリング作で商業デビュー! 大江健三郎、荒川洋治、メルヴィル、カフカ、井戸川射子、加藤典洋、聖書、田中小実昌、武田百合子、村上春樹、ドストエフスキー、小島信夫などを読むことが子育てに与える影響についてーー。
【推薦コメント】
「小説家を目指す」人たちは、小説を書こうと構えるので、萎縮したり、型に嵌ったりして、何のために書きたいと思ったの? と思うんだけど、この人からは書く楽しさや自由が感じられ……濃密な時間の流れに浸っていると、人生で最も貴重な記憶が何年ぶりかでリアルに蘇ってきた。読んでいてほんとに楽しい。
保坂和志(作家)
【著者略歴】
作家。1990年東京都生まれ。京都大学文学部卒。
【本文、一部抜粋】
Θが産まれてからしばらくはQも仕事を休んでいて、その間、Θに関することはすべてふたりで分け持っていたから、私も長い本を読む時間がいくらかあったし、長い文章を書く時間だってあったけれども、Θが三か月になり、Qは仕事に戻って、それからはほとんど一日中、私とΘはふたりきりで、本を読む時間もなくなった。もちろん本なんて読まなくてもいいのだが、本当は読みたい。
Θが昼寝でもしてくれればその合間に本を読めるはずだった。しかしΘは昼間、うちでは一切眠らず、眠る代わりにやがて泣き、散歩に連れ出さない限り、泣き止むことがなかった。Θはいくら泣いてもまだ涙は出ない。私は本を読む時間をなんとか捻出したかった。
それで絵本を読み聞かせる代わりに、大江健三郎『燃えあがる緑の木』の冒頭を読み聞かせた。特に理由もなかったが、Θが産まれて以降、私は大江健三郎ばかり読んでいた。
タイトル Θ(シータ)の散歩
著者 富田ララフネ
装画 大河原愛
デザイン 木庭貴信+岩元萌(OCTAVE)
発行者 北尾 修一
発行所 株式会社百万年書房
●四六判/並製/1c264p
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